逆転世界

逆転世界 (創元SF文庫)

逆転世界 (創元SF文庫)

レールの上に乗っていて一日に約0.1マイルのペースで進んでいく可動式都市「地球市」に住む主人公が成人して都市の外に出ることが許されて、外に出てみたら今まで都市の中で学んだ惑星地球とは全く異なったゆがんだ世界に直面してみたりなんだかんだしたりする話。
都市は勝手に動いていかないので都市を動かす人が必要で、そういう人たちだけがギルドという形で都市の外で活動している。で都市の中で暮らす人たちは都市の外のことなんか知らないわけだけど、ギルドに入った主人公がギルド見習員として都市を牽引するギルドやレールを敷設するギルドとかに加わっていくうちにこの世界での常識を読者に伝えていくような形をとっていることで異常な世界に対する読者おいてけぼり状態にならなくて親切っすね。
どうして都市は北へ向かわなければならないのか、とか北には何があって南には何があるのか、とか惑星地球と地球市はどういう関係なのかとかそういう一つ一つの謎が全く現実とは異なった一つの世界を作っていて、こういう異なった常識や世界を作る法則を感じるのは普通の小説とか近未来SFとかでは楽しめない一つの楽しみでもあって。んでそれが何度か読者に向けてひっくり返されたりして最終的に異なった常識や物理法則に説明がつけられるわけだけど、それが解決するのが終わりから数ページ前だったりするので終わりがずいぶんとあっさりしているなあという感じ。でも読者をつかんで離さない魅力的な世界設定やストーリーの展開は、いつも本を買っても一年くらい読まずにほったらかしにしてる俺が買ってその次の日で読み終えているという事実から感じ取ってください。
あまり関係ないけど、読んでるときに、ウィトゲンシュタインか何かの本に書いてあった「他人が従っている規則が自分と同じ規則かどうかを本質的に知ることはできない」とか「自分が赤いものだと思っている物を他人が赤いといっているからといって、それが自分が見ている赤い色と同じ赤い色をその他人が見ているとは限らない」とかそういうようなことを思い出した。